2026年2月14日
冬は空気が乾燥し、口腔内も乾きやすくなります。
「最近、口が乾く」「朝起きると粘つく」といった症状は、ドライマウス(口腔乾燥症)のサインかもしれません。
実は唾液には、単なる潤滑作用だけでなく、歯を酸から守る“化学的防御機構があります。
その中心となるのが、唾液緩衝能(バッファー能)です。
本記事では、唾液中の重炭酸塩(HCO₃⁻)がどのように酸を中和し、歯の脱灰を防ぐのかを、化学的プロセスに基づいて解説します。
虫歯は単なる「細菌感染」ではありません。
その本質は、
●細菌が糖を代謝
●乳酸などの有機酸を産生
●口腔内pHが低下
●エナメル質が脱灰(カルシウムが溶け出す) という化学反応です。
歯のエナメル質は主にハイドロキシアパタイト(Ca₁₀(PO₄)₆(OH)₂)から成ります。
pHが5.5以下になると、この結晶構造が不安定になり、カルシウム・リン酸が溶出します。
これが「脱灰」です。
緩衝能とは、pHの急激な変化を抑える能力のことです。
唾液中には主に3つの緩衝系があります。
1.重炭酸塩系(HCO₃⁻)
2.リン酸塩系
3.タンパク質系
この中で、最も重要なのが重炭酸塩緩衝系です。
細菌が産生する酸(H⁺)が増加すると、H⁺ + HCO₃⁻ → H₂CO₃ → CO₂ + H₂Oという反応が起こります。
つまり、
●酸(H⁺)を捕捉
●炭酸(H₂CO₃)へ変換
●最終的に水と二酸化炭素へ分解
することで、口腔内のpHを回復させます。
この反応速度は、唾液分泌量が多いほど高まります。
冬場は、
●空気乾燥
●口呼吸
●水分摂取量の減少
●自律神経の乱れ
などにより、唾液分泌量が低下します。
唾液が減少すると、
●重炭酸塩濃度が低下
●緩衝能が弱まる
●pH回復が遅延
結果として、脱灰時間が延長し、虫歯リスクが高まります。
特に夜間は唾液分泌が著しく低下するため、就寝前のケアが極めて重要です。
ドライマウスは単なる乾燥だけではなく、
●糖尿病
●シェーグレン症候群
●抗うつ薬・降圧薬の副作用
●加齢
などとも関連します。
糖尿病では自律神経障害により唾液分泌が低下し、結果として緩衝能が低下します。
したがって、口腔乾燥は全身状態の指標にもなり得ます。
本質的対策は、
1.唾液分泌を促す
・よく噛む
・キシリトールガム
・口腔筋機能訓練
2.水分摂取
・こまめな常温水
3.就寝前の徹底ケア
・フッ化物配合歯磨剤
・高濃度フッ素(歯科医院)
4.必要に応じて人工唾液・保湿ジェル
単なる「加湿」ではなく、唾液の化学的防御力を維持することが重要です。
●唾液の重炭酸塩は酸を中和する
●緩衝能は脱灰を防ぐ化学的防御機構
●冬の乾燥はこの機能を低下させる
●唾液管理は虫歯予防の根幹である
ドライマウス対策は、単なる不快症状の改善ではありません。
歯を守る生化学的防御機構を守ることに直結します。
この冬はぜひ、「潤す」だけでなく、唾液の質と量を意識した口腔管理を心がけてみてください。
当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
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