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口腔内マイクロバイオームを制御するという新発想 - 抗菌から「菌叢バランス」を整える時代の歯科治療

2026年1月20日

導入|なぜ「しっかり治療しているのに再発する」のか

歯周病や虫歯の治療をきちんと受けているにもかかわらず、「しばらくするとまた悪くなる」「定期的に通っているのに安定しない」このような経験をお持ちの方は少なくありません。

その背景には、従来の歯科医療が長く前提としてきた「悪い菌を減らせば治る」という考え方の限界があります。

現在、歯科医学では、口腔内マイクロバイオーム(口腔内菌叢)をどう制御するかという視点が、治療と予防の本質として注目されています。

本記事では、抗菌剤に頼るだけでは不十分な理由と、プロバイオティクスやバクテリオセラピーを含めた現代的アプローチを、医学的機序から解説します。


口腔内マイクロバイオームとは何か

口腔内には、現在700種類以上の細菌が存在するといわれています。
これらの細菌は単独で存在するのではなく、歯面や歯周ポケットにバイオフィルム(細菌が作る膜状構造)を形成し、相互に情報伝達(クオラムセンシング)を行いながら共存しています。

この「細菌の生態系」全体を口腔内マイクロバイオームと呼びます。

重要なのは、

●健康な口腔内にも細菌は存在する

●問題は「細菌の有無」ではなく「構成とバランス」   という点です。


抗菌剤だけでは口腔は安定しない理由

抗菌薬や殺菌力の強い洗口剤は、短期的には細菌数を減らします。
しかし同時に、

●有益な常在菌まで減少する

●菌叢の多様性(ダイバーシティ)が失われる

●耐性菌が出現しやすくなる  といった問題を引き起こします。

この状態は、腸内環境でいうディスバイオーシス(菌叢の破綻)と同じ概念です。

特に歯周病では、Porphyromonas gingivalis などのキーストーンパソゲンが、少数でも免疫応答を攪乱し、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)を過剰に誘導します。

つまり、単に菌を減らすだけでは、病態の本質は解決しないのです。


歯周病は「感染症」ではなく「菌叢破綻型疾患」

近年の歯周病研究では、歯周病は

●特定菌の感染ではなく、

●宿主免疫

●炎症反応

●マイクロバイオームの崩壊

が相互に影響する慢性炎症性疾患と理解されています。

この視点に立つと、治療の目的は「除菌」ではなく、炎症を起こしにくい菌叢構造へ戻すことになります。


現代的アプローチ①:プロバイオティクス

プロバイオティクスとは、
宿主に有益な影響を与える生きた微生物のことです。

口腔領域では、

●Lactobacillus属

●Streptococcus salivarius

などが研究されており、

●病原菌の付着阻害

●pHの安定化

●炎症反応の抑制 といった作用が報告されています。

これは「殺す治療」ではなく、善玉菌によって悪玉菌の居場所を奪う治療といえます。


現代的アプローチ②:バクテリオセラピー

さらに進んだ概念がバクテリオセラピー(細菌療法)です。

これは、健康な口腔内菌叢をモデルに、望ましいマイクロバイオームを再構築するという考え方です。

将来的には、

●口腔内菌叢解析

●個別化された菌叢調整 といった、Precision Dentistry(精密歯科医療)への発展が期待されています。


医科歯科連携の視点|口腔マイクロバイオームと全身疾患

口腔内マイクロバイオームの乱れは、
歯周病だけでなく、

●糖尿病(慢性炎症によるインスリン抵抗性)

●動脈硬化

●誤嚥性肺炎

●認知症  など、全身疾患とも関連します。

医科歯科連携の観点からも、口腔内菌叢の管理は全身管理の一部として位置づけられつつあります。


まとめ|これからの歯科医療は「整える医療」へ

これからの歯科医療で重要なのは、

●強い抗菌

●一時的な症状改善 ではなく、

●菌叢バランスを理解し

●炎症が起こりにくい環境を維持することです。

抗菌剤は必要な場面で適切に使用し、日常管理ではマイクロバイオームを整える視点を持つ。

これが、再発しにくく、本質的な歯科治療・予防につながります。

ご自身のお口を「細菌の数」ではなく、「細菌のバランス」から見直すことを、ぜひ意識してみてください。

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